H24年7月11日.12日 第60回 九州保育事業研究大会 大分県大会
第一分科会
~保育所保育指針に基づく質の高い保育を提供する~
座長:山崎法子
幹事:秦昭二
意見発表者:
福岡県 中山美由紀
長崎県 松尾肇浩
宮崎県 内村優子
報告者名:今井淳
藤崎千春
(発表内容)
福岡県 中山美由紀
光沢寺保育園は、系列の保育園・幼稚園計4園での園内研修に力を入れており、職種別園内研修やケース検討会、エピソード記述等を通して一人ひとりの子ども達に全職員が真摯に向き合うよう徹底している。エピソード記述はクラス便り等で保護者にも紹介している。常に「視点はいつも子ども達」をモットーに保育士同士の協同性を大切にし、専門家集団として十分に機能するよう取り組んでいる。
長崎県 松尾肇浩
愛宕保育園は公立保育所を民間移譲して社会福祉法人が経営するようになってまだ3年ほどであるが、子どもが中心であるということを前面に打ち出し、理念をしっかりと定めることから始めた。それを実践するために月目標を設定し、振り返りながら進めていった。できるだけわかりやすく簡単な言葉で求められていることを確認して園独自のPDCAサイクルを打ち出している。常に振り返りながら自己評価を行い、子どもの姿から学び取るという姿勢を全職員に徹底している。保育を楽しむことが質を高めるために一番大切だと思う。
宮崎県 内村優子
まがた保育園は、子どもの発達のために最も重要な土台となる情緒の安定を得るため、わらべうたを7年前から取り入れている。大人と子どもの隔てなく同じ空間で触れ合いながら時間を共有することができ、子どもの安定に大きな効果があった。手足の指を刺激することで脳を刺激し、心地よさの中で多くのことを吸収していく。集団でのわらべうた遊びの中で順番を待つこと等、発達がはっきりと目に見えるようになった。わらべうたを通じ、自主性や社会性など発達の土台となる情緒の安定について、大きな効果を期待できると思われる。
(助言内容)
助言者 別府大学短期大学部 相浦雅子
保育理念をしっかりと据えて、園の保育方針を具体化する過程の編成が1つの取り組みとなるが、これを職員が共有して実践し活かしていくことが重要であると思う。園内研修の在り方をよく考え、検討して充実させている光沢寺保育園さん、保育の質とは何かということを保育の中で問い直し自己評価を行う愛宕保育んさん、保育理念に則り、その実践方法としてわらべうた遊びを取り入れ、研究を重ねているまがた保育園さん、どの園も素晴らしい内容であると思う。どの発表にも共通して言えることは「楽しくなければ保育じゃない」という姿勢であると思う。この楽しさという点が高い質につながるのではないだろうか。先の見通しをもちつつ、常に振り返りながら「保育の質」とは何かを問うていく姿勢を持つことが重要だと考えさせられる内容であったと思う。
助言者 ゆりかご保育園長 首藤尚紀
各園は多くの行事をこなしつつ研修を行っているが、その中で慰め合うのではなく、チームとして共通認識を持ち、プロ集団としての意識を高めていくこと、これは非常に難しいが、どの発表者もしっかりと実践して素晴らしい発表内容であった。解りやすい言葉で目標を定め、子どもと一緒に保育士自身も楽しむことが重要であると再認識できたのではなかろうか。また、すぐに目に見える効果を出さなくても継続していくことが結果として大きな効果を生み出しているということも非常に良い勉強になったと思う。どの発表もキーワード.は「楽しく保育をすること」であり, これが保育の本質であり,この姿勢が保育の質を高めることに繁がると云うことがよく解る発表であったと思う。各園ともこれからの保育に是非このキーワードを取り入れて研鑽に努めて欲しい。
(グループ討議)
少人数のグループに分かれ、園における自分の役割や、完成の磨き方、保育の質を高めるための各園での取組みについて意見交換を行った。参加者からは,月1回程度の園内研修において外部講師を招いての講習会を行う、自己評価についての意見交換、気づきメモやエピソード記述、職種や経験年数などによって個別の園内研修を行う、カリキュラムや保育方法の見直しを徹底すること, 等の取組みが紹介された。 また、 十分な意思疎通のためのレクリエーション等も必要との声が聞かれた。
(まとめ)
各参加者とも、園内研修を行い、その中で反省や自己評価を行うとともに常に振り返り、先の見通しをもつよう努力している。子どもを主体として考えること、自分(保育者)「当たり前」を押しつけるのではなく、常に子どもの目線で考えることが重要であり、子どもも大人も 「保育を楽しむこと」が保育の質の向上に繁がるのではないだろうか。
第ニ分科会
~配慮を必要とする子どもの保育の充実~
座長:流宗哲
幹事:田原史記
意見発表者:
熊本県 浦本房実
鹿児島県 金田純子
沖縄県 金城真紀子 石原大貴
報告者名: 多田理恵
薬師寺裕子

(発表内容)
熊本県 浦本房実
気になる子に対してどのような関わりをもっていくのか。 3名の事例報告があり、それぞれパズル・おてだま・シール貼りなどの活動を保育に取り入れてきた。保育士とコミュニケーションをとりながら、経験を重ね、それぞれ出来ることが多くなってきた。 子どもとの関わりの中で感じたことは、気になる子どもに対して、 自分たちが「他の子と比べてないか」 「一番戸惑つているのは子ども自身と保護者であることを忘れていないかJ。担任だけでなくいろいろな分野から見たその子に対して意見交換をし、共通理解をした上で支授方法を考えることの大切さを改めて実感した。
鹿児島県 金田純子
わらべ歌を通しての異年齢児との関わり。 わらべ歌の独特な言葉の言い回しがおもしろく、 なかなか皆と遊ぶことが出来なかった子が興味を持つようになってきた。年長が未満児から年中までの子と関わることで、お兄さん・お姉さんという意識・自覚が強くなってきた。 また、 育児に悩む保護者へ寄り添うこと、個々の子どもにあった適切な支接をおこなっていくことが大切である。
沖縄県 金城真紀子 石原大貴
メモの作成や自已評価を通して、 園長や主任、 職員全員からアドバイスをもらい、保育士が日常の保育の中でどのような姿勢・気持ちで子ども連に関わっていくのかを振り返り、話し合いをしてきた。システムのきっかけは、職員の資質向上。始めのうちは書けなかったり苦悩したりもしたが、 今では保育者としての自信と意欲に繋がってっている。 これからの課題として、 「積極的なコミュニケーション」 「保育者自身の感情整理」「心理面の学び」 が必要となってくる。
(助言内容)
助言者 別府大学短期大学部 飯田法子
保健師さんも保育士の方と連携をとっていきたいと思つている。 どう連絡をとっていいのか悩んでいるので、 保育士の方から積極的に声をかけて欲しい。
保健師は専門家ではあるが、園・保譲者・医療機関とのつなぎ役。園で起きたことの事実を保護者に伝えた上で保健師に連絡し、 来て頂くなり、 巡回相談へのつなぎにして欲しい。言いにくい所もあるが、工夫しながら伝えていこう。(園長や主任等)
・母規が発達障害という話しを例に学げて・・
お母さんは一生懸命に子育てをしようと思つているが、 保育士や保護者同士のつきあいがうまくいかず、一歩も外へ出られなくなってしまう。 その為密室の中で虐待が行われている場合がある。 支援を受け、 安定してきた方に聞き取り調査をすると、 「自分の状態を保育園の先生が知ってくれ、 先生は自分の味方だ! と感じることが出来、落ち着いてきた」 というケースが多い。
そのため、 これからは保健師さん等を交えて、 お母さんたちをカウンセリングしていかなければならない。 保育士が 「行ってみませんか?」 という他機関への受診を勧めないといけない時代になっているのかなと感じる。 親が自ら行くことはない。 まわりからの何らかの繋がりがある。
お母さんたちが嬉しかったことは、 「先生が私(親) を責めないで、分かってくれたこと」 「特徴を分かってくれて、補ってくれたこと」。
して欲しいことは何かを聞くと、 「抽象的な営葉は分からないから言わないで欲しい。具体的な説明をしてくれると嬉しい。(例;解熱後の登園「ぼちぼち」「ゆっくり休んで」などは、どれくらいの期間なのかがわからない→「熱が36度台が2日続いたら登園して下さい」 等)
不安が取り除け、 更に保育園の先生を信頼することに繋がってくる。
「お母さんはどんなことが苦手かな?」など、お母さん自信をアセスメントしていく。難しいお願いだが、 お母さんを支えないことには虐待は止まらない。そのカギを握っているのは保育士である。
「保育士が足りない」 ことも訴えていきたい。 何らかの形で先生方をバックアップしていきたいと思う。
助言者 向洋保育園長 古谷和足
・保育士が持つ子どもへの熱い眼差しを感じることができ良かった。 気になる子・親・家庭があるが、 いかに子どもにとって良い方向に保育できるかを考えていくことが大事だと思う。 沖縄の保育園の 「自分を見つめ直す保育」 は素晴らしいなと思った。鹿児島の保育園の「一歩外から見ることの大切さ」を開き、周りの人が気付いていくことも大切である。
園と家庭、 機関の違携がないとこれからの社会は難しい。 津久見市では、 教育委員会、保健婦、福祉事務所、母子相談員等で話しあうグループがある。過去のことをさかのぼって探すのは大変なため、 ファイルを作った。 これを作ることによって、将来いろいろな手続きを行いやすくなる。地域がこどもを気にかけて、地域の中で育てていくという方針。
・幼保小連絡会→学校の先生はどんどん変わっていくので、 引き継ぎを頑張って欲しい。
・親に話しをするときは、園長・主任が話しをする。一人で対応せず、必ず複数で話しをする。 また、親から話しを聞くだけでなく、機関にも話しを聞いておく。 そうしなければ、親の話には親フィルターがかかってしまうから。
(グループ討議内容・まとめ)
自分の園での標子、 子どもの姿をグループで話し合う。
(1グループ8~12人)
Q,気になる子の姿をどのように親に伝えるか?各県、専門の方(保健婦)が巡回に来てくれるが、 大分にはなにもない。 巡回して子どもの普段の姿を見てもらぃたい。
第三分科会
~保育者の資質向上を図る~
座長:田邉タカ
幹事:小野久美子
意見発表者:
福岡県 平田恭子
長崎県 蒲池房子
宮崎県 篠原円
報告者名: 赤木真由美 森紀子
(発表内容)
福岡県 平田恭子
保育の資質の向上に向けての久留米市の取り組みは、保育職員・保育組織・保育実践の質を高めていくことが、子どもの発達を促すことにつながると考え研究主題を設定した。研修の概要は、職員の基礎研修では経験年数に応じた研修会や職務内容に応じた研修をし、専門研修では日常の保育の実践研修や給食研修、テーマ指定研修などをしている。久留米市研研究大会にて発表し、知識を深め、課題も見えてきたが子どものよりよい保育のために研修を重ね保育の質を向上していく。
長崎県 蒲池房子
保育の質の向上をめざすための研修プランを、人間性・専門性・組織性・自己評価と分類し、プランをたて行ってきた。中でもステキ発見レポートは、職員の自尊感情を高め、専門職としての意欲を高めるということがねらいでゲーム感覚で気軽にできた。自分の長所を認められることは保育の意欲につながり、積極的に取り組んでいこうと前向きになり、子どもや保護者への関わりもステキな発見のまなざしを持ってし、また自己の振り返りをし、人間性をみがく良いきっかけになった。職員の強い意志があれば研修の意義が理解でき互いに学びあい専門性の向上につながる。
宮崎県 篠原円
社会福祉法人(4保育園)の方向性と専門性の向上のための法人としての取り組みを発表。当園では、毎年の研修テーマを決め、園内で公開保育をしている。またSIあそびの教材を導入しあそびの様子をクラス公開している。野村生涯教育で人間教育研修、音楽ではマーチング指導研修、体育指導では年齢ごとの用具の使い方の研修などをしている。また保育の質の向上をめざしてケース会議・給食会議・健康安全検討会などを行っている。また朝礼では体調不良の子、欠席児、ヒヤリハットの報告と前日の遅出からの申し送りをしている。今後の課題としては目標を振り返り検討していく。「おかげさま」の気持ちを大切にしながら。
(助言内容)
別府大学短期大学部 高濱正文
自分も体験者なので皆さんの苦労がよくわかる。資質向上の取り組みの体制、個々の姿勢が大切になってくる。日頃の保育を見直していくことによって保育を向上していく。個々だけでなく相互関係も考慮していく必要がある。1番のポイントは人間関係だと思う。職員会議をいつするか、時間のとり方も様々であろうが、子どもたちについて語り合える時間を十分にとっていってほしい。
退職する先生へのステキ発見をすることは残っている先生へも好影響を与えている。認められたことに対して子どもや保護者に良い影響が与えられる。また毎年同じことを書かれほめられることは変わっていない自分への気づきにもなる。ビデオカンファレンスで自分の保育を客観視できるので、自分の姿や声かけの仕方などを振り返ることができる。良好な人間関係を作るには、園長や主任が雰囲気作りし、一人一人を大切な人材だと思ってほしい。保育者の質の向上の目的は子どもの健やかな成長のため、子どもの最善の利益のためであり、保育者の人間性があり、その上に専門性をのせていく。自分の専門性をたかめつつこれからの若い保育者の育成をしていってほしい。子どもにどうしてあげるべきか、どうしたらいけないのか、園内でもう一度考えていただきたい。
竜東保育園 保育士 吉村真美
3園の発表を参考に、自己評価・園の評価・第三者評価を認識したので、保育の質を高めるための努力をしていきたい。園内の職員の連携をとっていくことが大切だ。
(グループ討議内容・まとめ)
※助言者より経験歴ごとのグループ分けを提案され、同じ立場同士の中で活発な意見がだされた。
《園長グループ》
○職員の資質の向上・自尊心・人間性を高めるにはどうしたらよいか。
・新しく入ってきた職員には担当職員を付けてアドバイスしたり、相談にのったりしてもらう。
・一人一人への声かけ、良いところはほめる。ほめるところがない人もいるが、「髪を切ったな」「服がいいな」と小さなことでもほめる。
・コミュニケーションをとるのが苦手な人もいるが、「園が好き」「園長が好き」「自分が好き」という気持ちで。
《主任グループ》
○園内研修をどう行っているか。
・園内研修の時間を夕方にすると、勤務時間外になるので扱いがむずかしい。
・研修報告を兼ねて行う。
・グループに分かれて意見交換し、主任がまとめて後日プリント配布する。
・研修というと意見がでないので雑談から行う。
・ミニ会議を行う。
・学研の振り返りシートを利用し、振り返りをしたものを発表し質を高めあう。
・実技研修として救急法・防犯訓練・エプロンシアター・ベビービクスなどを行う。
・時間外をやってはいけない園もある。
・新人研修を4園合同で行う(掃除・挨拶など)
《10年以上》
・頑張ったことを手紙に書く
・自己評価をもとに園長・主任と面談を行う
・月の目標を月末に反省する
・記録の多さにやめていく先生がいる
・臨職と正職との仕事の差がある。年配の臨時には言いにくい
・仕事だけではなくプライベートでも仲良く
・園長に大切な人材なんだと一人一人言ってもらうと意欲につながる
《10年未満》
・日頃の保育のことを園で研修している
・保育の環境の違いがよくわかった
・かみつきの多い子への対応
・毎月の子どもの姿を書いて提出
・書類に時間がかかる。持って帰れない書類も持って帰ってする
・先輩との雑談も大切だと思うが、書類が書きたい
・他の先生に思いを伝えられない
・研修については、身近なことならよくわかるが、専門的になるとむずかしいこともある。

第四分科会
~地域の保護者支援の充実~
ー保育所利用家庭、地域の子育て家庭にむけてー
座長:木下秀孝
幹事:宗像文世
意見発表者:
佐賀県 原田貴子
熊本県 深谷千恵
宮崎県 日高米子
報告者名:森園敦乃 東陽妙香
助言 大分大学 名誉教授 山岸治男
助言 宇佐保育園長 佐久間博昭
(発表内容)
佐賀県 原田貴子
保護者支援の取り組みとして毎年2月に年長児親子を対象として「子育て講演会・親子製作」を計画し、「命の誕生」というテーマで市内の産婦人科の看護師長を講師として講演会を行っている。実際の赤ちゃんの大きさの人形や10円玉の重さ(4.5g)が2ケ月目の胎児の重さなどと子どもたちでも知っているもので表現してくれることで理解しやすい。この講演会を2月という時期、また年長児親子だけにしているのは、小学校入学前に自分の誕生に関心を持ち「命を大切にすること」や「自分たちは生きる力を持っていること」に気づいてほしいという思いからである。
また保護者に対しては我が子を授かった時の喜びを思い出して子どもを慈しんでほしいという思いがある。保育士に対しては保護者とともに子どもの成長を育んでいく仕事だということを意識づける講演会となっている。さらに同じ講演会を聞くことで、保護者と保育士(職員)が共通認識を持つことにより、つながりができ保護者とともに子どもを見守るという関係を持ちたいという保育園の思いが込められている。
その他のつながりとしては「声をかける」ということを大切にし、常に心がけるようにしている。
(助言内容)
「命の誕生」という講演会は保育園の今、聞くことにより中学、高校生と思春期の大切な時期に振りかえることができるのではないだろうか。
現在は病院でしかも母親一人での出産も少なくない。そのため命の誕生の場の共有ができない。このような講演会により保護者および園児や職員も一緒に「命の誕生」をより実感できている。
また人と人とのつながりを大切にしたいということでは「声をかける」は一番早く人とのつながりが持てる方法といえる。これからも子どもだけでなく保護者にも積極的に声をかけてほしい。
熊本県 深谷千恵
平成16年の合併により公立の保育園3園が統合され1園の公立保育園となる。その後6年間運営後平成22年3月に民営化が決定し、公立保育園児をそのまま受け入れまた園舎もそのまま利用し新年度がスタートした。
公立保育園の民営化に向けて、平成21年度に年間を通して公立保育園児の保護者を対象とする説明会を数回行った。内容は保育内容や具体的な園生活についてなどである。また同様に園舎が変わることや園児数が増えることを不安に思う他の園の保護者に対しても説明会を開き理解と協力を求めた。また子ども同士の交流会も計画的に進めた。そして園児に関する情報を職員間で共有できるような工夫(会議で伝達・連絡ボード)をした。また送迎時保護者とのコミュニケーションを持つよう心がけたり、クラスごとの掲示物を利用して少しでも子どもたちの園での様子を伝えたり保護者からのメッセージも掲示している。
合併により、地域に保育園1園、小学校1校と同じ学年で長く過ごさないといけない環境のため、なるべく保育園の時に保護者同士のつながりをもってほしいと考えている。小学校での子どものトラブルが、保護者同士のトラブルに発展することにならないように、これからは「横のつながり(保護者同士)」も意識した保護者支援の在り方を考えていかなければと思っている。
(助言内容)
公立から民営化することによって起こり得るトラブルがあまりなく済んだのはこのように保護者の不安な気持ちを受け止め、「その不安はたいしたことではないんだ」ときちんとした情報を知らせたことがよかったのではないか。
また新年度に入ってからは特に「職員全員が共通の認識を持って取り組む姿勢」「保護者とのコミュニケーションを持つ」ことを心がけ、保護者と保育士とのつながりを多く持とうとしている様子が伺える。
コミュニケーションの大切さや正確な情報は信頼につながっていく。地域のの中に1園しかないため、保護者が選ぶことができない。
だからこそきちんと方針を伝え、保護者のニーズを保育の中に保育に取り入れることもこれから考えてほしい。
宮崎県 日高米子
保護者が身近な存在に感じてもらえる子育て支援センターをめざし、平成10年に開設する。(平成20年からひろば型地域支援センターへ移行)保育園の行事に並行した活動を年間計画に入れて、地域の方にも手伝っていただく活動も多く取り入れている。
利用者数は年度によって異なるため新年度が始まってから保護者の意向もくみとりながら年間計画を決めている。ホームページを見て保育園の行事と連動する行事の時に参加する保護者も多い。
また近年配慮を必要とする子どもの入所もある。課題としては子どもたちの支援中心になりすぎていないか。県外から移住してこられた方の支援の(知っている人がいなく孤立しないように)としても考えている。
親子の居場所として地域子育て支援センターの役割は大きいと考えている。
(助言内容)
保護者は行事のみの参加や一日保育園に預ける必要もない保護者、親としてもスキルアップをしたい、子育ての相談や話をしたいという気持で子育て支援センターに参加している。
年間計画を見ると親子で一緒に学び一緒に活動することが多く、これだけ親子の活動があると、家庭でも親子一緒に活動できているのではないかと思う。
また「創」「作」「造」と「つくる」にもたくさんあるように「手」「足」「頭」を使い「つくる」活動をたくさん取り入れている。地域の方と一緒に行う行事も多く地域との結びつきも伺える。
最後に配慮を必要とする子どもの入所についてはこれからますます必要性が出てくるため、保育園とも連携を取りながら考えていかなければならないことだと思う。

(グループ討議内容・まとめ)
討議の中では保護者支援の方法として、講演会の実施が挙げられたが、なかなか保護者が集まらないという点を悩みに持つ園が多かった。
その対処法として、年長のみの親子での講演会や講演会前のミニ発表会、食事会、体を動かす保育参観などの催し物をする園の実践例が挙げられた。また少しでも多くの人の参加を・・・ということで、入園式を日曜日に実施し、また参加しやすい土曜日や夜に保育士が別室で子どもを預かるという園もあった。
講演会が園の強制的にならないように各園、独自の工夫をしているという意見がでた。またどこまで保護者支援なのか?という投げかけから、一時預かりに関しての問題点が挙げられた。
いきなり知らない場所に預けられた子どもにとっては、一時預かりという支援はどうなのか?近年、園に任せっぱなしの一時預かり利用の保護者が増えてきた。そこでどこまで保護者に伝えたら良いのか、また伝え方に悩むこともある。しかし現在ほとんどの家庭が核家族であり、側で悩みを聞いてくれる人がおらず、母親が大変な時代になっている。
そこで助言者からは、困っている人のニーズに応え、親の気持ちを受け入れるということが支援の一つであり、保育園が協力していく必要があるとの助言があった。
近年社会の変化に伴い、孤立化した親が増えたことで、親の育児疲れからのストレスが原因となり、保育園ではクレーマーやすべて保育園に任せっぱなしなどといった困った保護者への対応に苦慮している。
助言者からは、困った保護者が増えている背景には、かつてあった「子育ち・親育ち・保育士育ち・地域育ち」を担っていたはずの地域の実態がないことから、地域社会で親が育つ機会がなくなり大人が成長しない日本になっているからこそ、保育園が人と人とのつながりで育つ心の発達の場として、発信することで親も地域も育てる重要な場であるとの助言があった。
まとめとして、今後保護者支援を行う上で、保育園だけではなく、ケースによっては、各機関との連携も必要となってくる。
また保育園に対する保護者の要望は果てしなく、保育園が親へ指導をすると反感が生れてくるので、いかに親と保育者が保護者の気持ち、相手の状態を受け入れ、子どもの成長を伝えながら親にも変わってもらえるように、少しずつ保護者に子育ての力をつけることが保護者支援の一つである。
そして親を受け入れる保育者も職員同士で気持ちを分かち合うことも大切である。
保育園は、児童福祉法第24条に基づいて保育を行っている。私たちがその児童福祉の精神を持って、子育て支援を行う必要がある。
「保育は福祉から」生きる上での根本である福祉がなければ、教育もできない。つまり幹(教育)を作るためには根っこ(福祉の仕事)が大切である。とのまとめとなった。
第五分科会
~家庭との連携による食育の推進~
座長:上田通文
幹事:亀山寛子
意見発表者:
佐賀県 川﨑麻由子
熊本県 山内元子
沖縄県 下地美恵子 狩俣恭子
報告者名:永見由紀子 重松彩子
(発表内容)
佐賀県 川﨑麻由子
「一人ひとりの子どもたちのために」
「~家庭との連携による食育の推進~」ということで、離乳食への対応とアレルギー対応の実践と工夫について発表が行われた。離乳食への対応では、牛乳については中期食から、卵については後期食から、ということで、先ず料理に使用しながら保護者との話し合いの上で勧めている。アレルギー児への対応の実践と工夫では、年々食物アレルギーの子が増え、除去する食品や調理法、使用量にも個人差があり、誤食がないようさまざまな工夫をしている。それでも誤食失敗の例があり、保護者との協力関係の基に給食従事者と保育士等がそれぞれの立場で共通意識をもって分かりやすい対応や手順の「誤食回避のステップ作り」を行い、共通意識していくことが大切である。
熊本県 山内元子
「一本の苗から」
年長組の月一回のクッキングなどの食育の取り組みをする中で「かっぱのかっぺいとおおきなきゅうり」という一冊の絵本と出会い、子どもたちとの会話の中から一本の苗プロジェクトが生まれた。きゅうりの苗一本をプランターに植え、苗の生育状態、子どもたちのようす、活動(クッキング)、保護者の関心と感想等を記録した。子どもたちの野菜への関心がでてきたので、ゴーヤの苗一本やはつか大根の種一粒を植えた。保護者も関心をもって一緒に成長を待ちわびてくれた。子どもたちは自分で収穫した野菜は残さず食べ、命や物を大切にしようという気持ちを学んだ。これからも保護者と連携しながら、バランスの良い献立を作成し、環境にやさしい食生活を指導していきたい。
沖縄県 下地美恵子 狩俣恭子
「喜んで食べる子をめざした食育実践」
喜んで食べる子、苦手でも頑張って食べようとする子をめざして、食育の実践に取り組んだ。子どもたちと一緒にプランターに土を入れることから始め、夏野菜の種まきをした。虫を見つけて喜んだり、野菜の花の色や形などに気づいたりして、みんなで収穫をした。また2歳児はニガウリを収穫し、ニガウリジュースを作って飲んだり、その体験を遊びや表現に取り入れた。その結果、保護者も食育を今まであまり意識していなかったが関心を持ってくれるようになった。さまざまな家庭の食の環境があるので、子どもたちのために情報を提供し、継続的に関わっていかなければならない。家庭と保育所で一緒に食育をすすめていくことが大切である。
(助言内容)
別府溝部学園短期大学前教授・管理栄養士
青柳征子
平成17年に施行された食育基本法で初めて食育という言葉が使われ、義務教育の中で開始された。保育園での食育は、0歳から小学校入学までの大切な人格形成の時期であり、とても大切なである。食育の紙芝居使って園児に見せるなど色々なやり方があるが、職員の連携をとることが最も重要である。
アレルギーについては命に係わることなので、細心の注意を払わなければならない。保護者の判断に任すのではなく、担当医の診断を必ず受け、担当医、保護者、保育士それぞれの連携がとても大切である。個人の連絡帳でどんな食品をどのような状態で食べていいか、また家庭で何を食べたかの情報交換を細かくすることも必要である。
多くの人に食べてもらう食事を作る時は、味覚の違う人にいかに食べてもらうかを考えて標準の味で調整している。みんが好きな物はないので偏食もでてくる。嫌いな物を献立の中に切って入れるなどの工夫も必要であるが、味覚は五感で整うものなので、見た目、香り、音、部屋の環境なども大切になってくる。人間は生まれた時からミルクの味がわかる味覚を持っているが、育っていくと色々な味を覚える。それは本来家庭の役割であったが、今では社会(保育園)の仕事になってきた。
ひらた保育園 園長
安藤文年
保育園での保育士と栄養士(調理師)の仕事の重なった部分が食育である。子どもたちに嫌いな物を無理やり食べさせるのではなく、専門職としてどういう工夫をしたら子どもたちが進んで食べるようになるかを考えてほしい。食事中にマイナスではなくプラスの言葉かけをしてほしい。食事は楽しく食べるものだから、褒めてあげたほうがおいしく食べるようになる。園では月に一回職員の発表を行っている。調理担当も毎月色々なテーマで発表し、保育士との連携を図っている。また保育園で箸置きを使うようにしたら、だんだん無造作に箸を置かなくなり、マナーが身についてきた。子どもたちが保育園で過ごす0歳から5歳までは大切な時期である。いかに楽しく食事ができるか、家庭と連携をとりながら食事について深く考えて欲しい。 経験したことであるが、虐待されていた子は、食事の時ちょっとしたことでキレる。でもそんな子たちとキャンプに行って食事すると誰もキレない。そこには束縛がないから。食事をどんな環境でしてきたかは、子どもの発達に大きな影響を与える。食事のあり方を考えながら、保育士でなくてはできない、栄養士、調理師でなくてはできない、そんな仕事をしてほしい。


第六分科会
~子育ち・子育て支援のネットワークと保育所の役割~
座長:坊迫繁美
幹事:橋本信一郎
意見発表者:
福岡県 小嶋理香
大分県 本庄智宏
鹿児島県 五反田真美
報告者名:鋤柄洋嘉 牟田敬子
助言 大分大学 特任助教 田窪みゆり
助言 三芳昭和園長 西田佳那子
(発表内容)
福岡県 小嶋理香
「子育ち・子育て支援のネットワークと保育所の役割」
核家族化や地域のつながりの希薄化など、現在の子どもを取り巻く環境や子どもの育ちを支えるためにはどうしたらよいのか?を考えたとき、「保育士の専門性の向上」を図り、「保護者の意向や気持ちを受け止め」ながら、「さまざまな関係機関との連携」がとれる力をつけていくことが必要である。また、子育て相談会やキッズルームの開催など、園内外での子育て支援の実践報告や療育機関や医療機関等の専門機関との連携などの事例発表も行われた。専門機関との関わりは保護者側の心配があるだろうが、保育所が窓口となることで、そのような心配事を解消できるのではないだろうか。
(助言)
専門機関との連携については、ただ繋がっていれば良いわけではない。それぞれの役割を十分に理解した上で連携することが大切である。また園に一番身近な存在である「嘱託医」との連携を足がかりに、保健所が行う定期検診を利用すると連携がスムーズになるのではないか。
大分県 本庄智宏
「~幼児虐待対応の実体験をもとに~」
二件の虐待事例を通じ、虐待の疑いがあった場合にどのレベルで通告するのかの見極めの難しさ、園が通告したことで園や職員が攻撃対象になるのではないかという危機感を感じた。日頃から保護者や関係機関(児童相談所、市など)としっかりネットワーク形成をはかっておくことに加え、虐待の疑いを感じたら、子どものようすやアザなどの記録を映像や文書で残し、保護者の発した言葉やこちらが伝えた言葉をしっかりと記録して残しておくことが大切である。
(助言)
虐待対応にはチェックリストや対応マニュアル等の作成が有効。虐待の疑いが発生すれば、関係機関への通告義務がある。そのことが子どもの命を守ることにつながる。幼児虐待を未然に防いでいくネットワーク形成が大事である。
鹿児島県 五反田真美
「保幼小連携でともに生き、ともに育ちあう保育を実践しよう」
~専門機関・地域との連携~
「保幼小のモデル事業として平成17年度より3年間、文部科学省の研究指定を受けて取り組んだ実践研究発表であった。
連携の必要性について①職員②子ども③社会の各視点から、さらに子どもについては(1)人的(2)物的(3)社会的に分けて報告された。連携を深めることにより、個別対応を必要とする事案が起きた場合でも迅速に対応することができるようになったなど、活動の成果もあげられた反面、保育児童要録の活用や地域や保護者を巻き込んでのネットワーク形成などの課題も残された。
(助言)
保幼小連携は、自己肯定感が低いと言われている現代の子どもたちに、自分より小さな子のお世話をさせることで自己肯定感の向上に繋がる。保育児童要録の書き方については、小学校から具体的に書いて欲しいと要望が出ている。要録の提出方法も郵送ではなく、実際に手で持って行くことで気になる子について直接会って話をするきっかけになるのではないか。保育所の取り組み、実践の姿を見て苦労もあっただろうが本当に素晴らしい取り組みをしていると感じた。指導案(土台)を作ることは大変だろうが修正しながら段差をなめらかにしている。小一プロブレムは段差の解消からアプローチしている。交流の場も学校と話し合い無理のない活動で、両者(保育所側、小学校側)にとって意味がある。
第七分科会
~コミュニティの再生・子育て文化の創造にむけて~
座長:正本秀崇
幹事:三上美知子
意見発表者:
大分県 長澤勝代
鹿児島県 松元友香理
沖縄県 伊禮美代子
報告者名: 仲宗根真佐子
筒井真希
(発表内容)
大分県 長澤勝代
子育て文化を学ぶきっかけとし、乳幼児と交流を深め進路選択や職業選択の機会となるようにするという目的で9年間継続的に実施している高等学校の「保育所体験学習」に焦点を絞った実践報告。体験学習の受け入れ前に職員間の共通理解を深めるため保育の見直しや話し合いを重ねた。その体験を通して、子どもとふれあい、子どもをかわいいと感じ、やがて子どもを産み育てる時に子育てにいかせると思う。また、生徒が保育者養成校へ進み、保育士となった例もある。
今後の課題として、外に向けて発信をし、地域人材とのつながりを広げ職員の資質向上・チームワークを強化し、地域の拠点としてコミュニティ再生・子育て文化の創造に努めたい。
鹿児島県 松元友香理
本園は過疎化により徐々に地域とのつながりが希薄になりつつある。そんな中、年間の地域との交流行事をふりかえり、子どもの育ちにおける地域との交流の重要性を再確認し、行司と園児とのかかわりを「高齢者」「小学生」「和太鼓」の3つに分類し地域とのかかわりと子どもの育ちについての発表。
「高齢者」との交流では、ゆっくりと優しく接しようとする思いやりのある姿が見受けられ、コミュニケーション能力や表現力の向上につながった。
「小学生」との交流では、優しく接してくれる姿をみて年下の友達に対して優しい言葉かけや思いやりの気持ちが育ったことを感じた。
「和太鼓」の練習に取り組み始めたことによって地域の様々な行事に参加することで、一つのことをやり遂げた自信や集中力、協調性も身に付いた。またそういった活動の中で人と人とのつながりを深め、子ども達の豊かな心の育ち、コミュニケーション能力、表現力の向上を実感した。
沖縄県 伊禮美代子
近年、少子化・核家族化に伴い地域で子どもに関わる環境がなくなった。そこで地域の絆や子育て文化を再び取り戻し、子育て不安を抱えている家族をどう支援していくか、保育所でできることとは何か、子育て文化の継承をどうするかなど保護者支援・親育ちができるコミュニケーションづくりを目指す。
研究内容は、職員間で保育所保育指針を学習し共通理解し、保護者アンケートを実施し、保護者間交流や地域交流に取り組み、伝承文化や子育て文化の継承のため、わらべ歌や劇遊びをする。また保育参観を保育参加に変え、保育体験をしてもらい子育てのヒントを得たり、子どもと向き合う大切さを知ってもらう。
保育参加することにより、保護者と保育所との信頼関係が深まり、親がわが子の成長を知り、子どもへの関わり方を学び保育士自身も相互に学ぶことができた。地域交流では地域に出て関わることで親の意識も変わり地域参加へつながる機会となった。今後も、コミュニティの再生・子育て文化の創造に向けて地域の子どもを取り巻くすべての大人が子どもの最善の利益のために手を取り支えあい、育ちあうような関係を目指していきたい。
(助言内容)
助言 別府溝部学園短期大学 教授 脇信明
保育所は、待っていても地域との連携は保障できない。自ら周囲から知られる、社会から認められる場所を作っていかなくてはならない。
地域の文化をつなげていくことは大切だが、テレビ、ゲームが蔓延し、文化活動をしていく中で、成り立ちや歴史、なぜ現在まで残されているのか等を伝えていく必要がある。
保育参加に来て欲しい親=課題のある親だがそのような人ほど参加しな
い。苦手意識を持った親ほど意図的に理解していかないとミスマッチが起こるので、親の意識を変えていくことも大切である。
地域との関わりとして育ちの資源(人・行事・物)を活用し、地域の中の子どもとして育てていくことが大切である。
保育所には地域の大人たちの生活を守り、子ども達の命を守るセーフティネットとしての役割、地域の中の子どもが活き活きと育ち、地域の文化を吸収しながら育ち、文化の発信地としての役割がある。
助言 中央保育園長 木元 洋一郎
体験学習で保育士としての厳しさや喜びや楽しさを知ってもらい、パワーアップした保育士が採用できると感じた。今まで行動したいがきっかけがなく、どうしたらよいか躊躇していたこともあったが、今回の研究を明日からの保育に役立てたい。
第八分科会
~公立保育所の使命と地域社会での役割~
座長:松田陽子
意見発表者:
佐賀県 久保山史葉
長崎県 山川寿代
大分県 大石定廣
報告者名:稲田ひとみ
阿部厚子
(発表内容)
佐賀県 久保山史葉
鳥栖市は人口増加とともに核家族化が進行しており、商業地の中、保育園は地域の拠点として子育て支援が求められている。近年障害のある子、気になる子たちの入所も増加しているので、関連する分野の専門機関との連携を強化し、一人ひとりの応じた関わりや継続した支援を行うことが重要な役割だと感じている。
長崎県 山川寿代
出生率は緩やかな減少傾向だが、保育所への入所率は高くなってきており、特に0歳児の入所が増加している。気になる行動をする子どもや発達に課題のある子ども達への支援として、保育所、行政、地域とのネットワークを充実させ、職員の研修にも取り組み保護者支援を進めながら、子ども達の最善の利益が守られるよう日々の保育に取り組んでいきたい。
大分県 大石定廣
市町村合併以降加速した民営化により旧市内唯一の公立保育所となり、障がい児受け入れ施設としての位置づけがされ、拠点施設の役割を担っている。職員間で気になる子について共通理解するとともに、発達障害専門研修会に参加し、認識を深めている。保護者支援としては療育センターへの相談、市の教育委員会との協議の場をサポートしている。
専門関係機関等と情報の共有・連携・協力が容易であることを活かし、さらなる療育支援の機会を確保し、子育ての新たな支えあいと専門性を図っていきたい。
(助言内容)
助言 大分県福祉保健部 こども子育て支援課 参事 山口正行
現在、社会の在り方が変容している。そのため地域の子育て力も低下しているので、簡単に解決できなくなってきている問題も多いが、地域全体で子育てを支えていかなければならない。公立保育所はその中で大変重要な役割を担っている。
助言 溝部保育所長 長尾啓子
地域・専門機関とのネットワーク、地域とのかかわりを積極的に行うことが大切であり、子ども達に必要な支援は、公立保育所が担っていける部分を最大限に活かしながら丁寧に関わっていけるよう努力するべきである。
(グループ討議内容・まとめ)
グループ①
子育て支援、気になる子への支援について
巡回支援相談がスムーズに行っている。
公立保育園は公的連携機関との連携が取りやすい。
グループ②
子育て支援、気になる子への支援について
専門機関との連携を一冊のノートにまとめ(サポートブック)安定した支援を行っている。
保育士の専門知識の共有や資質の向上が必要であるとともに、保護者との相互理解も大切である。
グループ③
地域社会や保護者との連携
保護者とは日頃の送迎時に一人ひとりの様子を具体的に伝えることで安心感を与え、信頼関係を作っている。全職員で声をかけることによってさらに安心感を与えることができる。
公立保育所として自信を持って保育をしていることをアピールしていくことが必要である。
グループ④
配慮と支援を必要とする「障がい児・保護者」への取り組み
障がい児や気になる子の保護者の意識を変えるのはむずかしい。行政等との連携が必要となってくる。
未満時は発達障がいの判定がむずかしいので、療育センター専門員に判定していただく。
保育園と支援センターとの職員の移動がある場合、支援センターに行った職員が保育園に戻ってくると視野も広がってよいと思う。
入所申し込みの段階では障がいを判断できにくいので、保健師と連携して家庭状況等を知らせてもらう。(面談しているところもある。)
障がい児の受け入れがスムーズにできるように、行政も体制作りできるよう連携を図っていきたい。
特別分科会
~制度改革と保育所の未来~
幹事:後藤敦子
コーディネーター:
大妻女子大学教授 岡健
シンポジスト:
福岡県保育協議会会長 永野繁登
日本社会事業大学理事長 潮谷義子
前大分県議会
福祉保健生活環境委員会副委員長 嶋幸一
宮崎県保育連盟連合会副理事長 弘中信厚
報告者: 高橋喜美代
(発表内容)
福岡県保育協議会会長 永野繁登
私達は子ども子育て新システムに対して反対運動を起こし、企業が保育を担うことになっては守ることのできない公的責任、最低基準、応能負担を守り、保育の産業化、子どもを利益享受の道具にさせない。ということをしっかりと訴え、児童福祉法第24条を守った。
しかし、三党合意による修正システム自体はすばらしいと思ったが、法制化されたものには驚いた。修正システムはただ元に戻るだけではない。
その問題点として
① インオールフィッチング:新システムでは、施設整備費をなくすことで企業の参入を容易にしようとしたが、これは修正システムでもなくされている。厚労省からは、これは寄付金なので交付金で出すとの答えだった。今の政局ではやり直しは無理なので、参院で付帯決議にしてもらう。
② 保育の必要量を認定される「保育の必要量に応じて」親の就労状況に応じて、長時間保育の子と短時間保育の子が出来てしまう。
③ 子ども子育て支援法第27条では施設型給付費が保護者に対して支払われる点、常勤換算のおそれがある。
④ 子ども子育て支援法附則第6条では、利用者補助方式にはならない。
⑤ 保育の質の低下(企業参入で利益が上がれば処遇が下がる。)
⑥ 保育の格差
⑦ 幼保5体化と3省の所轄
幼児教育について
制度、予算のことはたくさん話してきたが、幼児教育はなんたるかを話してこなかった。
長時間、短時間の問題は、「乳幼児保育は何たるか」をはっきりすれば起こらなかったのではないか。これらを発信してこなかったことを反省。幼稚園は学校教育法の死守をしたが、保育団体は24条がボロボロになっても我慢した。これも反省しなければならない。保育とは何かを世間に広めていくことが私達の義務である。
待機児童の減少の為に、保育士資格の緩和をうたっている政党まであるが、本当にこの問題を解決しようとするならば、保育士の処遇を上げなければならない。では、この差をどうするか→キャリアアップしかない。キャリアのある保育士の処遇を厚くする。
日本の福祉→間違った方向に進んでいる。⇒公的責任が後退している。
修正システムも実質小手先のシステムになっているので、これからをしっかり注視していくことが最も大切である。
日本社会事業大学理事長 潮谷義子
税と福祉の一体改革というが、65歳以上1人に対し50年後1,2人になる。今回の改革は保育所の利益を狙ってのものではなく、未来への投資としてとらえていけるようなものにしていきたい。
待機児童は、主として都市圏、政令指定都市の抱える問題であるが、24条がキープされたというだけで安心してはいけない。保育格差や、地域型保育などあやうさをかかえたままである。政府が推し進める認定こども園も結局目標の半分もいっておらず、幼保を一体的に考えることの難しさがある。
元々保育所というところは、教育をやってきている。指針の改定のたびにその教育を意図してきたという経緯を持っている。これからはもっと0歳から人格形成にどのように資しているのかという理論も打ち出していくべき。
認可保育所と事業所の違いは、親への保育サービスの差。判断が「できる」「できない」という尺度でやっている保育は問題ということを保育士もわかっているべき。高齢化社会というものは、出来ない人が増えていく社会。人はできるできないではない。そのことをどう伝えていけるかも大切である。
現在、大きな変革の時期である。子どもをどのように育て、国の宝としていくか。そのためには、横断的、組織的に行っていくことが最も重要であるし、保育士もきちんとしたキャリアアップを行い、自分達の営みに対して理論をしっかりと持たなければならない。園も人件費だけで人を見るのではなく、養成校と手を組んで人材を育てていくことが大事。
前大分県議会
福祉保健生活環境委員会副委員長 嶋幸一
保護者の立場から物を言わせてもらうと、子ども達が保育園で生活したことは、現在でも生きる糧になっている。地域、保育園がしっかりと協力し合い、子どもを育ててくれたことを実感している。
また、保育園の存在というのは、女性に働くという選択肢を与える意味でも大きな価値があるし、安心して落ち着いて子どもと向き合うことが出来たということもある。保育園の役割というのは、今や社会の中で非常に大きな役割をもっている。
そんな中で、保育園の産業化・収益を目的とする企業が担うということはあってはならないという思いから、大分県議会では反対の意見書、決議書を採択した。
今回の三党合意を見ると、総合こども園という部分は無くなったが、中身を残そうとしている。必要なものを改革することには賛成だが、大人の都合でこの国の宝である子ども達が不利益を被ることのないように、しっかりと目を光らせていきたい。
子育て満足度日本一を目指す大分県として、子どもの為に何ができるかをしっかりと考え行動していくことが大切だと思っている。
大分県は、子育てホットラインという24時間.365日いつでも子どものことを相談できる窓口を整えていたり、子ども子育て支援課で、保育園・幼稚園のことを一元化して対応したりと、子育てに関しては自慢できるポイントがたくさんある。
資源の乏しいわが国では、教育人材育成が最も大事なことであり、学力とか体力という数値化できる部分よりも、考え方や価値観。普遍的な物の考え方を伝えていけるような、人間教育という部分にもっと力を入れるべきであると考える。そういった意味からも、幼児期という人間力を高めていく場合において土台となる時期の子ども達を預かる保育園という施設がその役割を担っている部分であるので、これからもさらに力を入れてもらいたい。
宮崎県保育連盟連合会副理事長 弘中信厚
修正法案は24条の問題が中心。これを守ったというのは子ども達を守ったといってよいが、代償として認定こども園の拡充(児童福祉の中に入れられてしまった。)を受け入れることになった。
新システム導入で税収を上げることが財務省の思惑であったように、いろいろな思惑が入り乱れて新システム議論が起こった。これは、また起こりうる可能性があるので、今後とも組織力を維持し子ども達に不利益になるようなことのないように、そして保育環境がいい方向に向かうように抱えた問題を解決していく力を持つように努力していくべき。
新システムの議論の中でも保育の質は色々な言葉で出てきたが、じゃあ保育の質は?といっても深まらなかった。最低基準でも具体的な質、数はあがらなかった。
医療の世界では、患者主体の医療が行われている。保育も同じで、目の前の子どもの成長を支えていくことが大切。「子ども達一人ひとりを大切にする保育」を。
意欲を持った若い保育士を繋ぎ止められない保育園の問題、今の制度の問題がある。子どものことが国会で話題にのぼるこの機会に、保護者と連携して、もっと色々なことを議論していくべき。老人福祉や障がい者福祉のように、事業になってはならない。保育業界を守るのではなく、子どもの為に命と心をどう守り育んでいくかを考え、行政や政治の世界に伝えていく。24条を守れたのだから、まだまだ戦っていくべきである。
大妻女子大学教授 岡健